Tuesday, February 25, 2014

アブダビ校の不都合な真実

湾岸諸国の国々が移民の労働者を搾取しているという問題は最近メディアを賑わせている。カタールの労働者搾取は英国のガーディアン紙の記事(http://www.theguardian.com/world/2013/sep/25/revealed-qatars-world-cup-slaves)が発端となって、欧米メディアが中心にカタール政府に対して集中砲火を浴びせW杯開催の是非を議論するまでに発展した。またサウジアラビアでは政府が移民労働者の不当な扱いについても最近頻繁に報道されている。この記事によると201211月から実に14万人のエチオピア人がサウジアラビアより強制送還されたという。労働者が搾取されているという報道がなされているのはUAEも例外ではない。今年の夏完成するアブダビ校の新キャンパスに関してもいくつかの記事が労働者の待遇が劣悪であると批判している(キャンパスの建設現場で労働者が死亡している。)いくつかの記事の中にはアブダビ校に関して誤った事実や学生が実際に話した言葉とは違う事を書いている記事もあり学生の多くがこのような記事に関して不信感を募らされているという印象を受ける。このようなことを受け、(私はまだ参加していないが)大学でも労働者の搾取に関して公式に学生や教授、専門家が議論する場も設けられるようになった。また労働者の待遇はまだ良いとは言えないと思うが大学も労働環境改善など努めているようである(http://nyuad.nyu.edu/about/statement-of-labor-values.html)
今後アブダビ校の新キャンパス建設現場だけではなくUAE、湾岸諸国で移民労働者の待遇が改善されるよう期待したい。
UAEの労働者に関してのパネルディスカッション(チラシ)

Monday, February 24, 2014

「頭の良い」人は何か作るべきだ Smart People Should Build Things

 アメリカのアイビーリーグや名門校の卒業生はこぞって投資銀行やコンサルティングなどで職を得る。著書によると例えばプリンストン大学では3-4割が金融業界に流れるという。(この記事は色々統計が載ってて面白い)そのような状況に対して疑問を呈するのがこの本Smart People Should Build Things。著者のAndrew Yangによればアメリカの経済を立て直すには、大企業にみんな流れずに優秀な人材は自らビジネスをしたりベンチャー企業で仕事したりすべきだと主張する。私自身、夏の間投資銀行でインターンをする身として色々考えさせられたし、日本の就職事情・日本の大学にも凄く当てはまると思うので英語だが就活生には特におすすめしたい。著者のAndrew Yangは名門ブラウン大学の卒業生とあって実によくトップ校の学生の心情を的確に描いていると思う。
Andrew Yang氏はGMATなどを受験された方などはご存知かもしれないがManhattan GMATという予備校の元トップで現在はVenture for Americaという非営利団体を運営している。Venture for America Teach for Americaの起業家版で優秀な学部生が卒業後2年間全米各地のスタートアップで修行をし、起業・小規模組織運営のいろはを学ぶプログラム。まだ団体を設立して長くはないが全米各地から応募があり定員を大きく上回る人気のプログラムだそうだ。(http://ventureforamerica.org/)
Amazon へのリンク


Monday, February 10, 2014

最終選考会

休日の土曜日にキャンパスに来ると見慣れない顔がいるなと思ったら、今日は新入生の最終選考会(Candidate Weekend)である事に気づいた。私が知る限りアメリカの大学は普通、書類選考(そして場合にほとんどの場合卒業生とのインタビュー)を通して学生を選抜する。しかしアブダビ校では最終選考会というものを実施し、 学生を実際にアブダビに招待する。年に4回ほどこの行事があり、毎回80人〜100人ぐらいの学生が世界中から呼ばれる。学生は週末2日〜3日間ほどアブダビで過ごしキャンパスを見たりアブダビを観光し、学校生活を垣間見る事ができる。その際の渡航費など諸々の費用は払ってもらえる。
アブダビ校がこのような事を行う意味合いは二つあると思う。第一に優秀な学生を選抜するため。書類選考では学生で見極めるのに限度があるからである。書面上では学業が優秀で活発な学生だが、実際に会ってみると社交性があまりなくまた英語での会話も苦手だったというケースもあると入学選抜担当者が話していたの思い出す。 このように書類上だけでは判断できない人間性を見極めるためアブダビに呼ぶというのが大きな理由だろう。また第二に、優秀な学生を確保する事である。アブダビ校に出願し、 最終選考会に呼ばれるような学生は大抵他の大学も受けており、複数校から合格をもらう場合が多い 。アイビーリーグやケンブリッジなどの海外名門校とアブダビ校、複数合格した学生を引き抜くためにアブダビ校の魅力を充分に伝える必要性があると大学は考えているのだろうと私は思う。現に最終選考会では、面接や模擬授業などに加え最高級ホテルのエミレーツパレスでの晩餐会や砂漠ツアーもあり学生がアブダビ校だけではなくアブダビ・UAEという場所を知ってもらおうという大学側の強い意志を感じる。

*Candidate Weekendについて興味のある方はアブダビ校の後輩のブログ(英語)を読んでみるとまた面白いかもしれない。

キャンパスでの昼食会、準備中
2年前私が最終選考会の時に撮った写真。アブダビのビーチ





Saturday, February 8, 2014

グループワークから学んだ事 − 共有する勇気


先日のブログポストで書いたSheikh Abdulazizが仰った言葉の中で特に感銘を受けた言葉がある。それは “If you want to go fast go alone, but if you want to go far let’s go together” ( どこかへ速く行きたいのなら一人で行け、ただ遠くまだ行きたいのなら一緒に行こう)というものである。この格言を仰った時、 私は仲間と一緒に砂漠を彷徨っている光景を思い浮かべた。キャンプに行ったのが迷ってしまい見渡す限り砂漠が広がっている光景である。そんな中、確かに仮に仲間と分かれて一人で歩き出した方が速く歩けるかもしれない。しかしそれでは、途中でサソリにかまれたり、足首を捻ったり、気力が萎えた時に助けてくる仲間がおらず結局は遠くまで行けないというのがSheikhの格言の意味であると私は解釈した。このように仲間と一緒に物事に取り組んだ方が、一見非効率に見えるかもしれないが最終的にはより良い結果をもたらす事になるというのは最近良く感じる。
それは慶應に在籍していた時も授業でグループワークやプレゼンテーションをする事はあったがアブダビ校では特にグループワークが多いからであろう。経済学の宿題の中で一人では解く事のできない難問を友達と一緒に取り組んだり、学生複数人と教授でコンピュータサイエンスの論文を書いたりと共同で何かに取り組むという機会が増えた。
量が増えただけではない。アブダビ校に来る前に経験したグループワークとアブダビ校でのグループワークでは大きな違いがある。それを行う動機である。今までは私にとってグループワークというのは先生や教授が授業内容の一環としてグループワークをしなさいと指示をされたからするものだった。多くの場合、何か歴史上の出来事や何かの業界について与えられた課題に関して調べてクラスで発表するなど一人でも出来る作業を単純に複数人で分担しているにすぎないという側面が多かった。しかし私が経験しているアブダビ校でのグループワークの多くは 学生が自発的に集まり各々知恵を絞り強みを活かし相乗効果を生み出すという側面が強い気がする。それは与えられた問題を解くなり、課題をこなすために一人で取り組みより効率的だし最終的に質の良いものを作ることができると多くの学生が思っているからであろうし、何よりグループワークに多くの学生が慣れているからであろうと私は思う。現に私も数時間後に開発経済学のモデルをエクセルでつくる宿題を一緒にするため一緒に授業をとっている学生二人と集まる予定である。

グループワークを通して、学んだ事はグループワークを成功させるためには仮に手柄を立てても奢らず謙虚にチームメイトにあらゆるものを共有する事が重要であるという事だ。例えば何か問題の解法あるいは答えをチームの中で自分だけがわかったとする。 それを奢らず丁寧に他の学生のために説明する。宿題の答えぐらいであったら大した事ないはないかもしれない。 しかし自分が数日間掛けて考え抜いたアイディアや連日徹夜して完成させたプログラムを何の見返りもなく他の人に教えるのには勇気と自信がいる。奢らず謙虚に苦労して手にした果実を共有するのに多くの人は躊躇するものであると思う。仮に共有することがチームにとっても他の学生にとっても良い事だと頭でわかっていても自分が苦労した分だけ人に情報や自分の成果を共有したくないものではないだろうか。奢らず謙虚に他の学生にオープンに共有するためには、勇気が必要だし自分に対して多大なる自信が必要である。しかし、この学校にはそのような事をする学生がいる。例えばコンピュータサイエンスを専攻している友人である。彼はコンピュータサイエンスの授業で既存のアルゴリズム(解法)より優れたものを発見し、国際的な学会発表できるレベルのものを発明した。本来なら彼一人の手柄なのだが、なんと他の学生を集め一緒に論文執筆やさらなる研究をしようと言い出した。アルゴリズムを考える上で他の学生と議論をし、一緒に試行錯誤したとはいえ最終的にそのアルゴリズムを考えついたのは彼である。仮にこの友人が、自分が発明したアルゴリズムなのだから自分の手柄だと主張し自分だけで論文を発表しても誰も何も言わなかったであろう。それを敢えて他の学生にも自分の成果を分け与えたのには脱帽する。そんな彼は我々のコンピュータサイエンスの授業のロールモデルであり、授業(そして彼は授業外でも様々な活動をしており)・学校においてチームワークを重要視する雰囲気をつくるのに一役買っている。この友人は心からSheikhの格言を理解し実践しているように私は思う。彼は一人で自分の成果を独占するよりみんなでそれを共有した方が最終的にはより良いものを作るができるしチームにとって良いことだと確信していたと思う。素晴らしい人間性の持ち主であり是非見習いたい。
砂漠に関連してアブダビの文化村を訪れた時の写真

Friday, February 7, 2014

王族の邸宅に泊まる事になった


先日UAEを形成する7つの首長国の1つアジマーンを統治する王族の一人 (Sheikh Abdulaziz)が来校された。Sheikh AbdulazizGreen Sheikhと呼ばれ(SheikhとはUAEでは王族に使う敬称のようなもの。Green Sheikhのウェブサイトはhttp://www.greensheikh.com/ )環境意識を高める活動を行っている。この度の来校はSheikh Abdulazizと一緒に週末を過ごす学生を選抜するためで私は運良く彼と一緒に週末を過ごす学生の一人に加わる事ができた。 アブダビ校では学校側が様々なアカデミックプログラムを開催していて、それらの多くが応募すれば参加できるというものが多い。私も去年は春休みにエチオピアに病院を視察するプログラムに参加したし、授業の一環として学期中に週末を利用しイスタンブールやネパール、サウジアラビアに行く機会も学生にはある。費用は全て大学が負担してくれる。
話が逸れたが、私は来月2日間Sheikh Abdulazizの邸宅に泊まり現地の文化や彼の活動などについてアブダビ校の男子学生七人と一緒に学ぶ予定である。 アブダビに来た当初はあまり現地の文化というものに正直あまり興味はなかったが、不思議な事に冬休みの間にアブダビを離れ少しずつUAE国民の文化に興味を持ち始めた。
UAEは少し奇妙な国で、UAE国民は人口の3割ぐらいしかおらず残りはインド、パキスタンや東南アジアからの移民などである。またアブダビ市内ではUAE国民(私たちはEmirati ・エミラーティと呼んでいる)の文化を知るというのは困難である。確かにグランドモスクやエミレーツ・パレスがあるがそれは長く受け継がれてきた文化を表すものではなく数年前完成した物だ。ドバイのBurj Al Arab, Burj KhalifaPalm Islandsのような華麗なホテルや奇抜な建造物は確かに一目を惹くし当初は驚くがそれが徐々に退屈になってくる。
これと言った明確なきっかけがあった訳ではないが私に心境の変化が訪れたのは、冬休みに12月ウクライナに約10日間スキーとをしに行き、さらに3週間フィレンツェに滞在した間だろうか。隣の芝生は青いというが、アブダビにいる時はヨーロッパが良い、日本が良いというがいざヨーロッパに行くと今度はアブダビのUAE文化を知りたくなる。しかしいずれにせよ、王族の方に呼ばれるという素晴らしい機会を得たのでこの体験を充分に享受したい。


写真は寮から撮った近くのモスク


Sunday, February 2, 2014

ニューヨーク大学フィレンツェ校

正式な数字は公表されておらず我々学生も推測することしかできないが、アブダビ校の学生のほとんどが4年間の全額奨学金を約束されている。それは授業料・寮費・食費・本国への往復航空券やお小遣いも付きさらにアブダビ以外の場所で合計1学年間海外留学する際の費用も含まれる。私の場合は去年1月はアルゼンチンのブエノスアイレス、今年の一月はイタリアのフィレンツェ、そして9月からはニューヨークへ秋学期・春学期を過ごす予定である。普通アメリカの大学は、12月中旬ぐらいから1月下旬ぐらいまで冬休みがあり3週間の冬学期は任意であるという。しかしアブダビ校では3週間の冬学期(私たちは1月に行われるのでJanuary Term、通称 J-termと呼んでいる)が特別な事情がない限り授業を履修しなければならない。冬休みは確かに約2週間と短いが、そのかわりプラハ・ロンドン・ガーナ・シドニー・上海・ブエノスアイレスなど五大陸に点在するニューヨーク大学のキャンパスへ留学できさらにその費用も無料なので文句は言えない。
赤外線カメラで撮影しています
ニューヨーク大学フィレンツェ校のキャンパス
ニューヨーク大学フィレンツェ校のキャンパス
そういう事情で私は3週間フィレンツェへ行く事となった。履修した授業は赤外線カメラで15〜16世紀のルネッサンス絵画を分析するというもの。January Termは特に著名な社会人が担当する事が多い。それはフルタイムで教授をしている時間はないけど、3週間だったらやってみたい!という方が多いからであろう。今回の私が履修した先生方もそうで、13人ほどのクラスをアメリカ国防総省で軍用に暗視カメラを開発していてその技術を絵画分析に応用している研究者とルネッサンス絵画の研究者の二人が担当してくれた。この授業はいわゆる教養課程の授業であり、少し専門的な事も学んだが学生が専門的な知識を会得するのが目的ではなく、テクノロジーとアートがどう実社会で交わるか実例を元に学ぶ授業である。テクノロジーとアートというとスティーブ・ジョブスを思い出すが、この授業では大まかにいうとテクノロジー面では赤外線を使い絵画がどのような色素を使い描かれたか分析し、アート面では赤外線カメラの画像や使われた色素を手掛かりに同年代の他の絵画と比較してどのような背景において描かれたか画家・依頼者は何を考えているのかなど考察するというものである。
ニューヨーク大学フィレンツェ校は、フィレンツェ中心部から車で15分の好立地にキャンパスを有する。1994年にイタリア系イギリス人で美術商で財を成したActon家より寄付されたものであり、フィレンツェの観光の名所の1つになっているという。(現に英語版ではあるがWikipediaにもそのNYU フィレンツェのキャンパスについての記事がある:http://en.wikipedia.org/wiki/Villa_La_Pietra)。寮もダビデ像が展示されている博物館そしてサンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂から徒歩1分という素晴らしい立地にあり出歩くのを楽しんだ。またシーフードスパゲティーに生ハム、ジェナートに舌鼓を打ちながら短いフィレンツェ滞在を満喫した3週間であった。

2014年 春学期の授業

今学期の授業として私は5つの授業を履修している。1つ目は開発経済学。元世界銀行チーフエコノミストの教授との少人数、約15人程のセミナーの授業。そして2つ目はUCLAのビジネススクールで博士課程を卒業したばかりのチリ人の教授が教えるコーポレイト・ファイナンス。さらに3つ目は天体物理学者が教える科学の限界そして不確実性についての授業。4つ目は統計学。また最後は初級2中国語。合計5つの授業を今学期履修する事にした。今学期の私のテーマは、(主に経済)のモデルについて少しかじってみる事である。もちろん専門的な事を理解するのは困難であるが、それでも開発経済学の授業で扱う発展途上国の経済成長を予測するモデルの概念、そして限界について学べれば良いなと思っている。そういう意味で科学の限界と不確実性についての授業や統計学と関わりがあり、これらの授業を理解する上で良い相乗効果が生み出せればと思っている。
そして前の学期から引き続き、元アブダビ投資庁チーフエコノミスト(去年の夏にインターンをした時はまだ働いたが、今は退職し現在アブダビ校で教授をしている)の下で石油市場調査を行っている。去年の11月初旬に始めたこの調査であるが、思いのほか難航している。やはりそれは石油の価格は様々な要因に影響され、それらの要因がどう変動するのか予測するのが非常に困難であるからであるが、それに加え、欲しい情報を手に入れるのに非常に苦労するから時間が掛かってしまうのである。大学には投資銀行のトレーダーなどが使っているというBloomberg Terminalがあり、私たちの情報収集の効率化に一役買っているがそれでも見つからない情報は多く有る。今後教授と色々協議して、何とかレポートを終わらせねばならない。ここ数ヶ月、この事が私の悩みの種だ。本当は12月中旬に終わらせるつもりであったのが、今や2月までもつれ込み、教授に申し訳ないばかりである。冬休みにルームメイトのウクライナ人とウクライナにスキーに行き、ゲレンデを滑っていた際にもふと「あ、石油市場調査しないと」っと脳裏に浮かんだり、時々夢にも出来たぐらいなので少しばかりはこの事についてストレスを感じているようだ。しかし何もこの石油市場調査だけではなく、去年はコンピューターサイエンスの課題などに追われ週末もパソコンと一日中にらめっこという日々も多く、常にプレッシャーを感じていたのでもう慣れている。勉強量としては確かに慶應にいた時に比べ格段に上がり、日々より勉強面において多くのプレッシャーを感じるようになったが不思議とあまり苦ではない。むしろ慶應にいた時の、大教室での講義に参加し自分があまり学んでいないと感じたような事がなくなり、焦燥感が減ったので心理的には楽になったぐらいだ。それに加えて純粋に学ぶ事が楽しいというのもあるし、あらゆる面で自分の成長を感じる事ができているから充実してる。

私はアブダビ校で様々な事を学んでいるが、それができている一つ大きな理由は多くの優れた教授陣と接する事ができているからである。私が履修してきた授業を担当した教授の多くは研究・学問において優秀な成果を収めているだけではなく人間的にも非常に好感を持てる方が多い。例えば前の学期に履修した宗教の教授は廊下ですれ違う度、「やーシンタロー!Good to see you. 調子はどうだい?」と話しかけてくれ、さらにオフィスに行くと授業に関係のない私のキャリアについても相談に乗ってくれる。
また、その元アブダビ投資庁チーフエコノミストの教授も非常に好感を持てる。ご存知かどうかわからないが、アブダビ投資庁はアラブ首長国連邦が稼いだいわゆるオイルマネーを運用する国営ファンドで、世界最大級の政府系ファンドだ。そしてその教授は数年前までアメリカのGeneral Motorsでチーフエコノミストをしていた人物である。そのようなバックグラウンドの持ち主なのにも関わらず、教授は自身の経歴について非常に謙虚だ。また、いつも親身になって学生の話に耳を傾けてくれ、忙しいであろうスケジュールの中で時間を割いてくれる。12月などは平日・週末関係なく毎晩のように夜10時ぐらいからミーティングを行った。また、彼の身だしなみは驚くほど簡素である。長ズボンにごく一般的な長袖のシャツ。他の教授から比較しても服装は地味であり、何十兆円を動かすファンドでチーフエコノミストをしていた人物とは思えない。そんな謙虚な教授であるが、彼が面白いと思う点については驚くほど貪欲である。例えば中国政府が行っているガソリンの助成金について簡単に発表した時には私以上に喜び文字通り飛んで興奮していた。
そんな教授らから学問の面だけではなく、人間性の面からも学ぶ事は多い。アブダビ校に来て思った点は、教授としてまたビジネスマンとして成功している人は人一倍謙虚であり、人間として魅力がある。これはたまたま成功していて謙虚な方が教授になっているのか、(もちろん能力が優れているなど多くの点があると思うが)人間としても魅力があるから成功する事ができたのかわからない。しかしこうして多方面において魅力のある教授と少人数の授業を受ける事ができるのが、アブダビ校の魅力の1つである。入門クラス1クラス15人ほど、上級のクラスになると1クラス5〜6人というのも多くある。そのような恵まれた環境を充分に活用できるよう今学期も頑張りたい!



(写真はこの投稿を書いている最中に撮った仮設キャンパスの写真)